昔話の「初めての旅シリーズ」も、もう7回目です。
2~3回であっさり終えてしまうつもりでしたが、予想外に長引いてしまいました。
「辛い話」と「克服した話」を交互に書いていますが、どうも「辛い話」の方がご好評のようで、なんだか複雑な心境であります。
(一応、「克服した話」の方がメインのつもりなので……)
今回は、
旅に出たきっかけとか 6:カオサン通りで救われた話
の続きで、また辛い話になります。
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2001年12月13日 夕方
色々な事があって、浮き沈みの激しい一日でした。
ホテルの朝食を食べられず落ち込み
↓
ワットプラケオを見学して喜び
↓
タイ人に騙されて激しく落ち込み
↓
日本人に悩みを聞いてもらって回復
という感じでここまで来ています。
カオサン通りは旅人が多い、というより殆どが旅人です。
西洋風のお店もあるし、欧米の音楽もかかっているしで、あまりタイっぽくありません。
まだ「タイとかタイ人がなんとなく怖い」という私でも、ここではリラックスして歩くことができました。
少し楽しくなってきて、気持ちが前向きになりました。
客引きのトゥクトゥクもあしらえるようになったし、路線バスにも乗れるようになりました。
楽しい気分のまま、ホテル近所のホアランポーン駅まで戻ってきました。
おっと、駅の隣にTATの看板が見えるじゃないですか。
TATというのは、タイ国政府官公庁の事です。
地球の歩き方にも載っているので、信頼できる施設です。
タイ人に声をかけられた
遠くから看板を見ていたら、タイ人に声をかけられました。
スーツ姿でIDカードを首から下げていて、しっかりした身なりです。
「日本人ですか?何か困ったことはありませんか?TATで相談にのりますよ」
こんな感じの事を、ゆっくりと簡単な英語で話してくれました。
でも何度も辛い思いをした私は、ちょっと警戒気味でした。
タイ人に着いていく
「日本語を話せるスタッフもいるので、ぜひ気軽に来てください。もちろん無料ですし、心配しなくて大丈夫ですよ」
無料で日本語スタッフと相談できる!しかも政府の機関で!
これはかなり魅力的だったので、オフィスに立ち寄る事にしました。
ここまでのトラブルについて相談して、対応策とかを教えてもらいましょう。
今後の旅ルートについても、アドバイスがもらえるかもしれません。
「何から相談しようかな♪」とか考えながら、その人に着いていきました。
*先にネタばらしをしてしまうと、ここはTATではなく、「TATの看板を掲げている旅行会社」でした。
*こういう紛らわしいオフィスは、かなり多くあります。
旅行会社のニッキーさん編
すっかり安心した気持ちでオフィスに入ると、すぐに陽気なタイ人スタッフが話しかけてきました。
「コニーチハ! ワタァスィ ハ ニッキーサン デスェ」
「こんにちは、よろしくお願いします」
「ドゾ スワテ クタサイ」
期待していたほど日本語は上手じゃなかったですが、気さくで感じが良い人だと思いました。
早速昼間のトラブルの事を相談して、アドバイスをもらったりしました。
色々と有益なことを教えてくれる上に、ペットボトルの水までプレゼントしてくれて、ニッキーさんは本当にいい人だと思いました。
「バンコクの次はどこに行くのですか?」
(相変わらずカタコトの日本語ですが、ここからは普通に書きます)
「チェンマイに行ってみようかな、と思っています」
「おー!チェンマイは素晴らしい町ですよ!目の付け所がいいですね!」
「へへ、、、ありがとうございます」
「トレッキングも楽しいですよ、少数民族の村を訪ねたりするんです」
「はい、そういう事もしてみたいです」
「そうすると明後日の夜行寝台列車で移動して、、、、チェンマイではこの3つ星ホテルがオススメなので、そこに3泊しますね、、、」
あれ、、、?
なんで話が具体的になっているんですか???
「……それでトレッキングの時は、1時間のエレファントライドとかをやって、最後はイカダで帰ってきます。どうですか?楽しみですね?」
「はぁ、、、そうですね、、、」
「(計算機を使いながら)これとあれを足して、、、全部で12000バーツ(≒36,000円)です。支払いは現金ですか?カードも使えますよ!」
え!?
いつの間にツアーを申し込む事になっているんですか???
*もちろん私は何も頼んでいません。
*こうやって一方的に話を進めてしまうのが彼らの常套手段なのです。
しかしこの時の私は、キッパリ断れない日本人でした。
ずるずると話に付き合ってしまっています。
「それは楽しそうなツアーですが、、、ちょっと高いですね、、、」
「じゃあ9900バーツ(≒29,700円)にディスカウントしてあげます!とても安いですよ!友達だから特別割引ですよ!」
一瞬で安くなりました。
それでも3万円弱ですか、、、この値段はどうなんでしょうね?
相場が分かっていないので、判断に困ります。
でもこのツアー内容は、まさに私のやりたかった事そのものなのです。
お金もしっかり貯めてきたので、予算の範囲内でもあります。
とても迷います。
「ではこちらの申し込み書類に名前を書いてください。あとコピーを取るので、パスポートを貸してください」
これはマズい!
申し込み手続きになっちゃってます!!!
私はまだ決断できていません。
それにあまりにも強引な展開が続いたので、やっと「この人は怪しいかも?」と気付きました。
でもなんか断りづらい雰囲気です、、、一生懸命に言い訳を考えました。
「ごめんなさい、今すぐには決められないので、よく考えてまた今度来ます」
「どうしてですか!?こんなに安くて魅力的なのに!空席もあと僅かですよ!」
「やっぱり決められせん、、、それにお金もパスポートもホテルに置いてあるので、今はありません」
「クレジットカードでも支払えますよ」
「カードもホテルなんです、ごめんなさい」
「じゃあ手付金をもらえれば、残りは明日でもいいですよ」
「今は20バーツ(≒60円)しか持ってないです、ごめんなさい」
「そうですか、、、じゃあ今から一緒にホテルに取りに行きましょう。すぐそこのバンコクセンターホテルですよね?」
「今日はちょっと、、、これから友達と会う約束があるので、、、」
ニッキーさんは超積極的に話を進めてきます。
なんかおかしいぞ?とは思いつつも、すっかりそのペースにはまってしまったので、話の流れを中断できません。
「じゃあ明日、ホテルのロビーまで迎えに行きますね。9時でいいですか?」
「僕はゆっくり寝るので、9時だと寝てると思います」
「気にしないでください!ゆっくり待ちますから。あと部屋番号を教えてください」
「部屋番号は、、、えっと、、、覚えていないです」
「部屋のキーに書いてあるんじゃないですか?ポケットにキー入ってるでしょ?」
「そうですね、、、ははは、、、えっと、、、302号室ですね、、、」
こんな感じでかなり強引に話を進められてしまいました。
その後も同じ調子で熱心に勧誘を続けられましたが、精一杯頑張って、なんとか申し込みを回避しました。
「今晩スケジュールとかを考えて問題がなければ、きっと明日またここに来ます。その時にお金とパスポートを持ってきますね」
「わかったよ。必ずまた来てね!」
「ははは、、、さようなら、、、」
と言って、やっとオフィスを出ることができました。
疲れました。
かれこれ30分くらいは、このやりとりをしていたと思います。
・言い訳を考えるのに疲れた
・ハッキリと断れなかった自分が不甲斐ない
・本当に部屋まで来られたらどうしよう、という心配
・タイ人に悩み事を相談すると、いつも心の隙を突かれて、さらに騙そうとしてくる
こんな事を感じて、また落ち込んでしまいました。
心身ともにへろへろになり、タイの不信感も高まりました。
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自称弁護士の男編
はぁ、、、コンビニに寄ったら、すぐに部屋に帰って寝よう、、、
ホントに疲れたよ、、、
と思いながらセブンイレブンに行ったら、お店の前でタイ人に話しかけられました。
彼は弁護士をしていて、地方からバンコクに遊びに来た所だそうです。
少し立ち話をしました。
「明日一緒に観光とか買い物に行こう!宝石の特別セールをやってるからベリーラッキーだね。信頼できる友達がトゥクトゥク運転手だから心配ないよ」
いつの間にかこういう流れになっていました。
またですか、、、
どうしてみんなして僕を騙そうとするんですか、、、
YesでもNoでもなく、、、そもそも返事すらしなかったかもしれません。
「また騙されている!」というショックで、心神喪失気味になりながらその場を立ち去りました。
この24時間で、少なくとも4回は嫌な思いをしました。
「嘘の勧誘」は、20回以上されたと思います。
この国はどうなってるんですか、、、
「旅を楽しむ」どころか、「無事に帰る」ことすら出来ないのでは、、、
セブンイレブンで日本人に泣きつく編
そんな状態でセブンイレブンに入ったら、日本人を発見しました。
バンコクで貿易の仕事をしているNさんという人でした。
昼間と同じように泣きそうな声でお願いして、なんとか話を聞いてもらえる事になりました。
私のホテルのロビーに行き、昨日と今日の事を話しました。
あとは、タイは不潔だ、酷い奴ばかりだ、全然面白くない、すぐ帰国したい、などの愚痴を話しました。
ひと通り聞いてもらったあと、Nさんにこんな事を言われました。
「それは大変だったな、でも楽しいと思うのも辛いと思うのも、自分次第なんやで」
詳細は忘れてしまいましたが、こういう趣旨でした。
でもこの時はよく理解できませんでした。
だってこんなに酷い目にあってるんですよ。
タイ人は皆して隙あらば騙そうとしてくる酷い人たちなんです。
それがどうして、「自分次第なんやで」なのかなあ、、、と。
反論はしませんでしたが、スッキリと納得することも出来ませんでした。
しかし色々な事を話せたので、だいぶ気持ちが楽になりました。
数日後に再会する約束をして、Nさんと別れました。
そして部屋に戻りベッドに横になりました。
今日あった事とか、Nさんに言われた事とかを考えましたが、
5分もしないで泥のように寝てしまいました。
明日はどうなることやら。
あとがき
今回はここまでです。
まずお詫びします。ごめんなさい。
2001年の私がダメダメ過ぎです。書いていてイライラするくらいです。
今なら「いらないです、興味ないです、理由も説明したくありません」って言ってハッキリ断れますが、当時はなかなかそういう意思表示もできなかったようです。
とても弱っちかったですね。
ちなみにツアー価格は、後でボッタクリである事が解りました。
これで序盤の辛い話がひと通り終わりましたので、次回でついに覚醒すると思います。
といっても大した事が起きるわけではないので、過度の期待はしないでくださいね。
あともう1つ、念のために書いておきます。
この時点ではタイの事をボロクソに言っていますが、2014年現在の私はタイが大好きです。
世界三大オススメ国のひとつであるくらい、タイが大好きです。
ちょっと困ることはありますが、素晴らしい国だと思っています。